第5回 「読解では何に注目すればよいのか」

 前回は「木を見て森を見ず」のたとえで、「読解」では「一つ一つの木=言葉(単語)」の役割に注目することが大切であるというお話しをしました。

 では、この「役割」にはどんなものがあるのでしょうか。もっとも大切な役割は、「主語(s)と述語(v)」(何は何だ・何はどうする)です。文はこの2つを用いて「構造化」されます。これを「sv構文」と私は読んでいます。

 ただ、このようなシンプルな文は、評論文では多くはありません。日本語は主語と述語が離れ、述語は文の最後(句点=。)にやっと出てきます。多くの文は、「s+間の部分+v。」の3つで構成されています。ですから、主語と述語の間にある部分がどんなまとまりになっていて、どういう働きをしているかを確認することが必要です。

 この「間の部分」もまた、svを意識しながら整理できますので、とにかく、文を「sv構文化」してみることが「読解」の基本だと思って、どんな文に出会っても、これを実践することをお勧めします。実践の仕方は、YouTubeの動画で紹介していますので、こちらを是非ご覧ください。

 この「sv構文」以外で注目する主な役割では、「指示語」「接続語」「否定語」「疑問語」が挙げられます。

 まず「指示語」と「接続語」ですが、これらは「前後の文の関係」を意識するうえでチェックしておくべきです。「接続語」については次回詳細に説明します。

 次に「否定語」ですが、これは、「~で(は)なく(、)~。」のように否定と肯定が一文の中で対比される場合や、「~で(は)ない。」のように、一文が否定だけで構成される場合があります。また、「~がない。」「~(し)ない。」「~(が・し)ない~」のように、直前の言葉を否定するものもあります。どの使い方でも大切なのは、否定されたものは「筆者が肯定してないもの」を指すことが多いということです。「読解」は「分解して見やすくすること」ですから、「否定語」は「分解」の際に重要な「目の付け所」になります。

 最後の「疑問語」ですが、これは、「なぜ・どうして~か。」や「どうだろうか・どう~か。」、「どういうこと(だろう)か・どういうもの(だろう)か・どういう~か。」、「~かどうか。」のようなパターンで、文末「~か」を伴って用いることが多く、このような構文の多くは、「問題提起」と言って、「読者に問いかける形で読者を引き付ける」表現方法で、評論文では一般的な手法です。ただ、この問いかけは実は「自問自答」の一部であって、この後に必ず「自答」(筆者の考え方)が示されています。大学入試では、この「問題提起」の部分に傍線をつけ、「自答」の部分を答えさせるという出題もあるので、「疑問の後には答えあり」を意識しながら読み進めることを、受験生にはお勧めします。

 今回の内容はどうでしたか? 納得していただけたでしょうか。